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2017年6月19日月曜日

死役所

この世とあの世の狭間では、お客様は仏様

死んだらどこへ行くのか。
あの世があって天国か地獄へ向かうのか。
それとも無になってしまうのか。

この世を去り、まず辿り着くのがこの世とあの世の間にある「シ役所」
成仏するには書類に手続きが必要となる。
悪人も善人も、他殺も自殺も事故死も関係なく訪れる。
様々な人生を歩んできた多種多様なお客様で溢れている「シ役所」に共
通していること、それは皆死んでいることである。

コミックバンチにて連載中の「死役所」。
毎回死者が役所を訪れて去っていくオムニバス形式で進みます。
一見爽やかないい話かと思いきや、人間の怖さや醜さがサラリと顔を見
せる作品で、どうしようもない不条理を叩きつけられます。
しかし、そういったドロリとした話だけではなく、人間の温かさや美し
さが滲む展開もあります。
きれいごとでは済まないのが人生ですが、しっかり生きる人や優しい人
は確かにいる。

誰もが避けられぬことではあるけれど、意識はしていなくて何も準備が
できていない。
そういう人が大半なわけですが、「カニの生き方」の主人公は「死」に
向き合って生きていたと思います。
諦めるのではなく、死ぬまでの時間を生き抜き、満足して逝く。
後悔に苛まれる人が多い「死役所」の中で、この話はとても存在感を放
っています。

お客様は皆仏様ですが、職員もまた仏様です。
常に笑顔が張り付いている主役のシ村さん。
一応ヒロインらしい、仕事は真面目なニシ川さん。
見た目は厳ついけれど人情家なイシ間さん。
他にもたくさんの職員が在籍しています。
彼らには共通点があり、少しずつどんな生前だったのかが明かされてい
きます。

単行本の方では、各話の後にその人のこれまでの人生の写真が載せられ
ます。
悲しい最期だった人でも、生まれてから死ぬまでにはいいこともあった
わけで。
子供の頃や楽しそうに笑う写真などが心に重さを感じさせます。
彼らの写真はもう二度と増えることはないと突きつけられている気がす
る。
読んだ後、死ぬまでしっかり生きなければと思わされます。

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